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【考察】『葬送のフリーレン』が描く

【考察】『葬送のフリーレン』が描く

※本記事はアニメ『葬送のフリーレン』第1期(第28話まで)の内容に触れています。未視聴の方はご注意ください。

『葬送のフリーレン』は、なぜこれほど多くの人の心を打つのか。派手な冒険活劇でもなければ、劇的などんでん返しがあるわけでもない。それなのに、見終わった後にずっと心に残り続ける。筆者は、その理由がこの作品の核にある「人を知る」というテーマにあると考えています。本記事では、フリーレンの旅が持つ意味を、作中の描写をもとに読み解いていきます。

前提の整理:フリーレンとヒンメルの旅路

物語の出発点を振り返りましょう。フリーレンは勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼンとともに10年かけて魔王を倒しました。人間にとっての10年は人生の大きな一部分。しかしフリーレンにとっては、1000年以上の人生における「ほんのひととき」でしかありません。

この認識の差が、物語の原動力になっています。冒険を終えた仲間たちと別れ、50年後に再会したフリーレン。その時、ヒンメルはすでに老人になっていました。そしてほどなくして、ヒンメルはこの世を去ります。

フリーレンがヒンメルの葬儀で涙を流す場面。あの涙は「悲しいから」だけではないと筆者は思っています。「知ろうとしなかったこと」への後悔。それがあの涙の正体ではないでしょうか。

考察①:「知ろうとしなかった」ことの残酷さ

フリーレンは冒険の10年間、仲間たちと行動をともにしていました。でも「一緒にいた」ことと「知っていた」ことは違います。ヒンメルがなぜいつも花畑を探していたのか。なぜ自分に優しくしてくれたのか。フリーレンはその理由を、ヒンメルが亡くなってから考え始めるんですよね。

これは長命種ならではの悲劇です。人間にとって10年は「かけがえのない日々」ですが、フリーレンにとっては「また会える」と思える程度の時間でしかなかった。だから深く知ろうとしなかった。関係を急ぐ必要がなかった。

残酷なのは、フリーレンに悪意がないことです。知ろうとしなかったのは、無関心だったからではなく、時間の感覚が根本的に違ったから。この「悪意のない残酷さ」が、多くの視聴者の胸に刺さる理由だと思います。

考察②:「葬送」という言葉に込められた二重の意味

「葬送のフリーレン」というタイトルには、二つの意味が込められているように読めます。

一つ目は、作中で語られる意味。フリーレンは多くの魔族を討伐してきた魔法使いであり、魔族を葬る者——つまり「葬送の」フリーレンです。これは魔族たちが恐れる異名として作中に登場します。

二つ目は、物語を通して浮かび上がるもう一つの意味。フリーレンは旅の中で、亡くなった仲間たちの足跡をたどり続けています。かつてヒンメルが見せてくれた景色を訪れ、ハイターが残した教えを思い出す。それはまるで、長い長い弔いの旅。仲間を弔い続ける者としての「葬送のフリーレン」です。

タイトルが物語のテーマそのものになっている構造。これが本作の巧みさだと筆者は感じています。

考察③:フェルンとシュタルクは"第二のヒンメルたち"なのか

フリーレンの新しい旅の仲間であるフェルンとシュタルク。二人との関係性には、かつてのヒンメルたちとの旅の影が重なります。フェルンの生真面目さ、シュタルクの臆病だけど芯がある性格。どこかかつての仲間を思わせる要素があるんですよね。

しかし、筆者はこの二人が単なる「代替」ではないと考えています。フリーレンは今度こそ、目の前の仲間を「知ろう」としているからです。フェルンの好きな食べ物を覚えていたり、シュタルクの成長に目を細めたり。些細な描写の中に、フリーレンの変化が表れています。

過去の後悔を胸に、今度は「知ろうとする」フリーレン。その姿勢こそが、この旅を特別なものにしているのだと思います。

別の見方:フリーレンは本当に「変わった」のか

ここまで「フリーレンの変化」を軸に考察してきましたが、あえて別の見方も提示してみます。フリーレンは本当に変わったのでしょうか。

実は、フリーレンは昔から「知ることが好き」だった可能性もあります。彼女が集め続ける「民間の魔法」がその象徴です。花畑を出す魔法、服が綺麗になる魔法。実用性のない魔法を愛するフリーレンは、もともと世界への好奇心を持っていたのかもしれません。

つまり、変わったのは「人への関心」だけなのかもしれない。世界には関心があったけれど、人に対しては時間感覚の違いから距離があった。ヒンメルの死がきっかけとなり、その関心が「人」にも向くようになった——そう考えると、フリーレンの旅はより一層深みを増して見えてきます。

ただ、大切なのは「変わったかどうか」の結論ではないと思っていて。「知ろうとする姿勢」そのものに意味がある。それがこの作品のメッセージではないでしょうか。

まとめ:知ることに遅すぎることはない

フリーレンの旅は、ある意味で「手遅れの旅」です。ヒンメルはもういない。直接聞くことはできない。それでもフリーレンは旅を続け、かつての仲間を知ろうとしています。

でも、その旅には確かな意味があります。なぜなら、知ろうとすることで、フリーレン自身が変わっていくから。そして新しい仲間との関係も、過去の後悔があるからこそ深くなっていく。

あなたの周りにも、「一緒にいるけれど、実はよく知らない人」はいませんか。この作品は、そんな問いを静かに投げかけてきます。知ることに、きっと遅すぎることはないのだと思います。

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参考情報

  • アニメ『葬送のフリーレン』公式サイト:https://frieren-anime.jp/
  • 原作:山田鐘人(原作)/アベツカサ(作画)『葬送のフリーレン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
  • アニメ第1期:全28話(2023年9月〜2024年3月放送、マッドハウス制作)
  • アニメ第2期:2026年1月16日より放送中